たばこの不始末に対する火災保険
タバコの不始末による火災は、見方によっては自業自得とも言えるのですが、多くの場合は火災保険の補償対象となります。タバコによる火災と火災保険との関係について詳しく解説します。
重過失ではない限り補償対象となる
日本国内における火災原因の第1位は放火です。そして第2位が、タバコの火の不始末です。日本人の喫煙率は年々減少の一途をたどっていますが、それでもなお、タバコを原因とする火災は後をたちません。
タバコの不始末を原因とする火災は、見方によっては自業自得の側面がありますが、ほとんどの事例の場合は火災保険の補償対象となっています。ただし、タバコの扱いについて重過失が認められた場合は、その限りではありません。どの程度の過失を重過失と判断するかが重要なポイントですが、少なくとも「誤ってカーテンに引火させてしまった」「うっかりしていて火を消すのを忘れてしまった」等のレベルであれば、重過失は認められず補償の対象となります。
重過失とは、言わば故意に近いほどの重い過失を指します。故意でタバコから火災を起こす人はほとんどいないので、タバコの不始末を原因とした火災のほとんどは、補償の対象になると考えて差し支えありません。
では、タバコの不始末における重過失とは、具体的にどのような内容を指すのでしょうか?
タバコの不始末における重過失とは
タバコの火の不始末における重過失とは、たとえば寝タバコによる失火です。 寝タバコとは、その名の通り、ベッドや布団などに寝転がった状態でタバコを吸う行為。燃えやすいものが近くにあることが多く、しかも、本人はそのまま寝てしまう可能性もあるため、一般的な感覚において寝タバコは極めて危険な行為と認識されています。逆に言えば、本人の注意によって防げた失火と言うこともできます。そのため寝タバコによる火災は「故意に近い重大な過失」と認められ、火災保険の補償対象から外されることが一般的です。
なお、どのようなタイプの保険であれ、故意に事故を発生させた場合には、保険金を受け取ることができません。よってタバコの火を故意に壁や家財等に移した場合には、当然ながら火災保険の補償対象から外れます。
タバコの不始末における補償の実例
タバコの火の消し忘れでボヤに
入浴を終えて脱衣所で着替えをしていたAさん。居間の方向から煙の臭いを感じて確認してみたところ、入浴前に吸っていたタバコの火の消し忘れで火が出ていました。慌ててお風呂のお湯を汲んで消火し、消防車が到着するまえに鎮火。しかしながら、家財や壁などに広く被害を受けてしまいました。
被害を受けたのは、壁、床、サッシ、布団やカーテン、パソコン、スーツ、メガネなどなど。合計で200万円弱の被害額でした。これに対して保険会社からは、被害を受けた家財の評価額200万円弱、および特約による臨時費用60万円弱、残存物取片づけ費用約7万円の、合計270万円弱の保険金が支払われています。
Aさんの場合は、言わば「うっかり火を消し忘れていた」ということ。重過失は認められず、無事、補償の対象となった例です。