火災保険の保険金に贈与税は課せられるの?
ここでは、火災保険から下りる保険金と税金に関して解説しています。結論から言うと、火災保険の保険金は課税対象にはなりません。贈与税などは発生しないので安心してください。
火災保険の保険金は課税対象にならない
火災保険から下りる保険金には、税金がかかりません。
万が一の火災被害などが生じた場合、ケースによっては、保険会社から数千万円もの保険金が入金されることがあります。莫大なお金が振り込まれることから、「税金はどうなるんだろう?」と心配になる方もいると思いますが、火災保険の保険金には課税されないので安心してください。
なぜ火災保険の保険金は課税対象とならないのか?
入金された保険金が受取人の経済的利益となる場合には、その保険金に対して課税されます。一方で、入金された保険金が受取人の経済的利益にならない場合には、その保険金には課税されません。
火災保険から下りる保険金は、火災等によって生じた損失を埋め合わせることに使われます。経済的マイナスを埋めるためのお金であり、決して受取人本人にプラスの利益が生まれるわけではありません。利益ではない以上、火災保険の保険金は非課税扱いとなります。
課税されない保険金と課税される保険 ~経済的利益の有無が基準~
同じ保険金でも、受取人にとってプラスの利益となる場合には、税金が課せられます。以下、火災保険における保険金の趣旨をより明確にするために、さまざまなタイプの保険金における課税・非課税の違いを見てみましょう。
課税されない保険金 ~利益とはみなされない保険金~
火災保険から下りる保険金のほかにも、以下の保険金は利益とはみなされず、課税されません。
入院給付金
入院費を要する状態(経済的マイナスの状態)を埋め合わせるための保険金です。よって、保険金受取人にプラスの利益が生まれるわけではないため、非課税となります。
通院給付金
入院給付金と同じ趣旨で非課税となります。
手術給付金
入院給付金と同じ趣旨で非課税となります。
介護年金・介護一時金
民間の保険会社における介護年金や介護一時金も、要介護によって生じる経済的マイナスの状態を埋め合わせることが趣旨となるため、利益とはみなされず非課税となります。
高度障害保険金
高度障害にともなって生じる経済的マイナスを埋め合わせる趣旨の保険金なので、利益の性質はありません。よって非課税となります。
地震保険金
火災保険と同じ趣旨で非課税となります。
課税される保険金 ~利益とみなされる保険金~
死亡保険金
被保険者が死亡したことで支払われる保険金。受取人にとって精神的なマイナスはあるものの、経済的なマイナスはありません。よって死亡保険金は受取人の経済的利益とみなされます。契約の状況により、相続税、所得税、贈与税のいずれかを納付しなければなりません。
満期保険金
満期が到来したときの保険金を受け取ることができる貯蓄型の保険。受取人にとって、経済的なマイナスを伴わない保険金となるため、利益とみなされて課税されます。契約の状況により、所得税か贈与税が課せられます。
解約返戻金
保険を中途解約したときに受け取る保険金。満期保険金と同様の趣旨で、所得税か贈与税が課せられます。
生存給付金
被保険者が一定の年齢まで生存していたときに支払われる保険金。受取人の経済的マイナスを埋める目的の保険金ではないので、利益とみなされて課税されます。
なお、たとえ「課税される保険金」であったとしても、それぞれの保険金の制度や金額等の違いにより、非課税となる場合があります。たとえば贈与税の場合、年間で110万円までの金額であれば、課税されません。
個々の保険金において納税する必要があるかどうかについては、都度、保険会社や税務署等に問い合わせるようにしましょう。
年末調整と所得控除の関係
生命保険や地震保険などに支払っている保険料については、保険料の一部または全部が所得控除の対象となります。一方で火災保険については、いっさい所得控除の対象になりません。
平成19年から火災保険の所得控除は廃止
ご存知でない方も増えてきたかも知れませんが、かつて火災保険の保険料は所得控除の対象でした。火災保険の所得控除が廃止されたのは、平成19年に入ってからです。廃止の理由は、火災保険の加入が一般的になったからです。
かつて火災保険の加入が一般的ではなかった時代、政府は広く国民に火災保険への加入を啓蒙しました。ところが国民の間には、なかなか火災保険の重要性が浸透しない状況。そんな事態を打開するために、政府は火災保険の保険料を所得控除の対象にするとの政策を発表。これを契機に、火災保険の加入者は徐々に増加していきました。
平成18年、政府は「火災保険の加入が国民に十分に浸透した」と判断。翌年から火災保険料控除の時限立法を廃止し、現在にいたっています。
火災保険の特約「地震保険」は所得控除の対象
火災保険の特約として設定されている地震保険。加入するか否かは契約者の任意ですが、地震保険についても、かつての火災保険と同様に政府が強く加入を推奨している保険です。
2017年現在の地震保険の加入率は、全国平均で63.0%。東日本大震災を契機に加入率は上昇傾向にあるものの、南海トラフ地震や首都圏直下型地震のリスクが叫ばれている近年、まだまだ加入率が高いとは言えません。
政府は、火災保険のときと同様、地震保険への加入率を上げるために、目下、地震保険料控除政策を実施中。加入率が一定水準まで上昇した暁には、火災保険の時と同じように控除制度が廃止されるかも知れません。
地震保険料控除の手続き
給与所得者の場合は、年末調整の際に「地震保険料控除証明書」を添えて勤務先に提出してください。ほかに必要な手続きはありません。
個人事業主の場合は、確定申告書類に所定の金額を記入のうえ、「地震保険料控除証明書」を添付して税務署へ提出します。
「旧・長期損害保険」に該当する火災保険は所得控除の対象となる
ただし、経過措置として「旧長期損害保険料」の場合は、一定額が控除の対象になります。
「旧長期損害保険料」とは、(1)平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間又は共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)、(2)満期返戻金等のあるもので保険期間又は共済期間が10年以上の契約、(3)平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないものになります。 つまり、平成18年12月31日までに、満期返戻金等のある10年以上の長期火災保険に加入した場合は対象になる可能性があります。
ですから、対象になりそうな火災保険等に加入している場合、確認する必要がありそうですね。
火災保険で支払った保険料には所得控除が適用されませんが、一部、例外的に所得控除が適用される例があるので、今一度加入中の火災保険の内容を確認しておきましょう。
所得控除が適用される火災保険とは
所得控除が適用される火災保険とは、「旧・長期損害保険」に属する火災保険。以下の要件を全て満たした場合、「旧・長期損害保険」に該当する可能性があります。
- 保険期間が平成18年12月31日以前にスタートしている火災保険
- 保険期間が10年以上で、かつ満期返戻金がある火災保険
- 平成19年1月1日から現在にいたるまで、保険内容を変更していない火災保険
以上3点を満たした火災保険は、現在でもなお所得控除の対象となる可能性があります。「火災保険は、ずいぶん前に契約したままだな…」とぼんやり感じる方は、念のため保険証券を確認してみましょう。