火災保険と火災共済の違いは4つ
よく耳にはしますが、いまいち違いがわからない「火災保険」「火災共済」。ここでは火災保険・火災共済の大きな違いを4つまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
火災保険と火災共済の比較
火災保険と火災共済の違いを、簡単な比較表にまとめました。
火災保険 | 火災共済 | |
---|---|---|
運営母体 | 損害保険会社 | 団体(生協など) |
商品の目的 | 会社の利益追求 | 団体組合員の福利厚生 |
補償の範囲 | 火災・落雷・破裂・爆発・水濡れ・落下・飛来・衝突・ 盗難・損傷・汚損・騒じょう・風災・ひょう災・雪災・水災 (契約次第では他にも各種の補償あり) |
火災・風水害 |
特約の種類 | 多い | 少ない |
火災以外の 被害補償率 |
最大で火災の補償額の100% | 火災の補償額の5%程度 |
地震保険の 取り扱い |
火災保険とセットで国が運営する地震保険に加入 | 別途、独自の地震保険に加入 (国が運営する地震保険には加入できない) |
地震保険の 補償額 |
火災の補償額の50%まで国が補償 | 火災の補償額の20%程度まで団体が補償 |
運営母体 | |
---|---|
火災保険 | 損害保険会社 |
火災共済 | 団体(生協など) |
商品の目的 | |
火災保険 | 会社の利益追求 |
火災共済 | 団体組合員の福利厚生 |
補償の範囲 | |
火災保険 | 火災・落雷・破裂・爆発・水濡れ・落下・飛来・衝突・ 盗難・損傷・汚損・騒じょう・風災・ひょう災・雪災・水災 (契約次第では他にも各種の補償あり) |
火災共済 | 火災・風水害 |
特約の種類 | |
火災保険 | 多い |
火災共済 | 少ない |
火災以外の 被害補償率 |
|
火災保険 | 最大で火災の補償額の100% |
火災共済 | 火災の補償額の5%程度 |
地震保険の 取り扱い |
|
火災保険 | 火災保険とセットで国が運営する地震保険に加入 |
火災共済 | 別途、独自の地震保険に加入 (国が運営する地震保険には加入できない) |
地震保険の 補償額 |
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火災保険 | 火災の補償額の50%まで国が補償 |
火災共済 | 火災の補償額の20%程度まで団体が補償 |
表からも分かるように、火災保険と火災共済には非常に大きな違いがあります。同じ火災を補償する商品とは思えないほどの違いです。
両者のもっとも大きな違いは運営母体。火災保険は民間企業が運営し、火災共済は非営利団体が運営しています。運営母体の違うため、商品の目的が「利益追求」なのか「組合員の福利厚生」なのかという違いも出てきます。
ただ保険に加入するほうとしては、運営母体や商品の目的の違いよりも、補償内容や保険料、補償金額の違いが気になるところ。結論だけ端的に言うと、火災保険は保険料が割高で補償内容が手厚く、火災共済は保険料が割安で補償内容が手薄い、という点が大きな違いです。
様々な被害を想定して補償を手厚くしたい人には、火災保険が合っているでしょう。最低限の補償で構わないという人には、火災共済が合っているでしょう。 それぞれの世帯の希望や実態に合わせ、最適な商品を選びたいものです。
以下、火災保険と火災共済の「運営母体」「補償金額」「補償範囲」「地震保険の取り扱い」「火災保険と火災共済のメリット」について詳しく解説します。
火災保険・火災共済の違い~運営母体~
火災保険と火災共済の大きな違いは、運営母体が異なっていることです。
火災保険は「三井住友海上」「東京海上日動」と言った民間企業が運営しています。特徴としては、企業同士が売り上げを競い合っているため、多様な面で充実したサービスが受けられることです。
火災共済を運営しているのは、厚生労働省が管轄している「全労済」[1]「コープ共済」[2]といった非営利団体。特徴として利益を重視していないため、火災保険と比べると保険料が安く設定されています。企業間との競争がないのでサービスの種類は少なめです。
火災共済の場合は、各生活協同組合に加入している組合員向けに提供されているものなので、運営母体と密接につながったタイプのサービスだと言えます。
火災共済は厚生労働省によって運営されていますが、火災保険は金融庁によって管理されています。このように、政府から見た立ち位置も異なる両者ですが、「保険法」によって規制を受けているという点では同じです。
火災保険・火災共済の違い~補償金額~
次は保険に加入する際に1番気になる「補償金額」の違いについて紹介します。中でも「災害以外の補償金額」についてスポットライトを当てました。
火災保険の場合、水災や風災といった自然災害で家に何かしら破損した箇所が出たとき、火災と同じ補償額を受け取ることができます。火災共済では、火災と自然災害の補償金額が異なることが特徴で、多くの火災共済は火災補償額の5%程度と言われています。火災補償額が7,000万だとすると、火災以外の補償額は350万までとなってしまうのです。
火災保険・火災共済の違い~補償範囲~
火災保険の補償範囲は、火災はもちろん水災や風災といった自然災害にも対応してくれるほか、特約をつければ水漏れ・建築外部からの衝突や落下なども対応してくれます。幅広い補償範囲の中で自分が必要だと思うプランを自由にカスタマイズできるため、自分にあったオリジナル火災保険を作ることが可能。
火災共済の補償範囲は、火災と自然災害です。火災保険と自然災害のパックで用意されていることがほとんど。もともと保険料は安く設定されているので、自分の住まいに合ったパックを見つけられるとお得に利用できる保険です。
ただし、自然災害とセットになっている火災共済を提供している場合でも、別途「自然災害共済」が用意されている場合も多いようです。
つまり、火災共済の自然災害補償だけでは、現実的な住宅の修復は難しいということ。そのため、自然災害に備える「自然災害共済」という商品が存在しているのです。
火災保険・火災共済の違い~地震保険の取り扱い~
火災保険と火災共済では「地震保険」の扱いが異なることも念頭に置いておきましょう。
火災保険は、地震保険のみに加入したいときでも必ず火災保険もセットで加入しなければなりません。火災保険の補償額の最高50%までを国が補償してくれる仕組みです。
火災保険の保険料や補償内容は、保険会社によって異なりますが、火災保険に付随する地震保険はどの保険会社でも一定です。支払われる保険料は、住宅の全損、大半損、小半損、一部損の4種類の基準が設けられていて、どれに当てはまるかによって変わります。 地震保険は財務省によって提供されているサービスなので、これらの内容を保険会社が勝手に変更することはできません。
一方、火災共済で保険に加入する場合は国が補償する地震保険を利用することができません。しかし、火災共済が独自で作った地震保険を利用できます。この場合は、火災保険額の20%程度の保険額までしか支払われません。その上、火災共済のタイプによっては、自身での半焼や半壊に対して、加入金額の5%までしか保険金を受け取れない場合もあります[3]。
ですが、中には国によって定められている地震保険と同様、最大50%まで補償されるものも。補償額が大きいことに加えて、火災共済金額の5%以上の損害額で保険金が受け取れるなど、有利な条件が設定されていることもあります。
このように、火災保険の地震保険は一定の補償が受けられるのに対して、火災共済の地震保険は、加入する共済によって補償額や条件が大きく変わります。ですが、自然災害との兼ね合いも考えると、どちらが良いかは、実際に居住するエリアの状況によるでしょう。
火災保険と火災共済のメリット
火災保険のメリットは「サービスの充実」です。火災保険だけではなく、地震保険がセットでついてくることや火災保険と同じ補償金額を受け取れることは、とても魅力的だと言えます。
火災共済のメリットは補償範囲が限られているので「保険金が安い」ことです。たくさんの保険を組み合わせなくても、安く利用したいと考えている人にはおすすめの保険。
火災保険と火災共済のメリットを踏まえると、どちらも魅力的だと感じて「とりあえず安い方で…」と火災共済に傾いていませんか?
火災保険は火災があった後の保険ではなく、補償範囲を見ると災害や建物外からの衝突なども補償をしてくれるので、住まい全体の保険だと言えます。
また、基本的な保険料のみを見ると火災共済の方が安く感じられますが、火災共済で水災などの自然災害に備えるためには、「火災共済+自然災害共済」のプランにする必要があります。
最近の火災共済は自然災害に備えるものも多くなってきていますが、実際に自然災害に遭遇した場合を考えると、火災共済だけの補償額では心もとないものです。
一方、火災保険では「火災保険」の単体だけで、様々な自然災害に備えることができます。そのため、自然災害に備えようと考えた結果、火災保険と火災共済の保険料がそれほど変わらなくなった、というケースも。その上、火災保険では自然災害に対する補償額も十分です。
実際に住まいに何かの災害が振りかかってからでは遅く、立て直すには少ない金額しか受け取れない火災共済より、広範囲を補償してくれる火災保険がおすすめです。