火災保険の再調達価額(新価)とは
ここでは、火災保険の保険価額における「再調達価額・新価」の考え方について詳しく説明します。あわせて、対となる概念である「時価」についてもご紹介します。
再調達価額(新価)とは
「再調達価額・新価」とは、火災保険において保険価額を決める際の基準の一つ。損害が生じたその場所において、保険の対象物とまったく同じものを新品で作り直した際にかかる金額、と考えれば良いでしょう。よって保険価額を「再調達価額・新価」に設定しておけば、万が一、建物が全焼したとしても、保険金のみでまったく同じ建物を作り直すことができる、ということになります。
「再調達価額・新価」と「時価」の違い
「再調達価額・新価」に対する概念として、火災保険の契約では「時価」という考え方もあります。保険価額は、通常、「再調達価額・新価」か「時価」のいずれかを基準にして設定されることになります。
「時価」とは
新築物件は、いつまでも新しいわけではありません。風雨にさらされることで、また世帯の生活の中で、外側も内側も徐々に劣化が進みます。劣化が進んだ建物は、もちろん新築時代と同じ価値ではありません。3000万円で建てた家が、数十年後には1000万円程度の価値に下がっていることもあるでしょう。
こうした、いわゆる経年劣化を考慮した建物の現在価値のことを「時価」と言います。「時価」は、「再調達価額」と並んで、火災保険を契約する際の保険価額(保険金の支払い限度額)に設定されることがある基準。すでに火災保険に加入している人、もしくは、これから火災保険の加入や見直しを検討している人は、保険価額の基準が「時価」になっているのか、それとも「再調達価額・新価」になっているのかを確認するようにしましょう。
どちらを選んだほうがお得?
保険価額の基準として、「再調達価額・新価」と「時価」、どちらを選んだほうがお得なのでしょうか?
結論から言えば、「再調達価額・新価」を選んだほうがお得です。なぜならば、万が一、建物の損傷が生じた場合に、まったく同じものを作り直すための全額が保険金として支払われるからです。「時価」を選んでしまうと、3000万円で買った建物が全焼した際、必ずしも3000万円が支払われるとは限りません。
現在の火災保険の主流は「再調達価額・新価」を基準として保険価額が決定しますが、1998年の火災保険制度改正以前に契約している保険商品においては、そのほとんどが「時価」を基準にして保険価額が決定しています。その当時に火災保険の長期契約を結んでいる世帯は、一度、保険内容を確認してみることをお勧めします。万が一、「時価」の状態で保険契約が続いていた場合には、「再調達価額・新価」での火災保険に乗り換えしたほうが良いでしょう。
「時価」の場合は保険料が割高になっていることも
「時価」を基準に保険価額を設定した場合、たとえば新築3000万円の建物に対して、保険価額3000万円に相当する保険料で契約を締結します。
しかしながら先述の通り、建物は時間とともに劣化していきます。3000万円で建てた家が、現在では1000万円まで価値が下がっているかも知れません。
「時価」による保険契約の場合、通常、建物の経年劣化に応じて保険料が下がることはありません。新築3000万円の時に契約した保険は、たとえ「時価」が1000万円まで下がったとしても、保険料が1/3になるわけではないのです。その一方で、万が一、建物が全焼した場合には「時価」である1000万円までしか補償されません。すなわち、保険料を割高に支払っている、ということになるのです。この状態のことを「超過保険」と言います。
特に1998年以前に火災保険の長期契約をし、かつ現在までその保険が有効な場合においては、そのほとんどが「超過保険」の状態になっていると言われています。心当たりのある人は、すぐにでも保険内容を確認してみましょう。
自然災害に備えて再調達価額での保険見直しを
昨今、地震や大雨など国内の様々な場所において多くの自然災害が発生しています。地球温暖化に加え、東日本大震災の影響による大きな地殻変動が生じているのかも知れません。東海地震や南海地震、首都圏直下型地震などの発生も予想されています。
これら自然災害によって自宅を失った場合、被災者生活再建支援法によって支援金が給付されることもありますが、その支給額は最高で300万円。自宅はおろか、仕事さえ失う可能性もある中、わずか300万円ばかりの支援金で生活を立て直すこと、まして家を新築することはほぼ困難でしょう。
あるいは、たとえ火災保険・地震保険などに加入していたとしても、保険価額の算定基準が「時価」であった場合、一般に補償額は下がります。家を新築できるほどの保険金は、期待できないでしょう。
火災保険に加入していない場合、または「時価」による火災保険を契約している場合、自然災害が発生すれば、自分たちに落ち度がないにも関わらず、家族が路頭に迷う可能性があるのです。
そのような時に備え、火災保険に加入していない人、または「時価」による火災保険を契約している人は、すぐにでも「再調達価額・新価」による火災保険の検討をしたほうが良いでしょう。
災害はいつやってくるか分かりません。一刻も早い行動をお勧めします。