火災保険を複数契約してもいいの?
ここでは、火災保険の複数契約の問題点について解説します。複数契約すること自体は違法ではありませんが、たとえ複数契約をしても、建物の評価額を超える保険金がおりることはありません。
火災保険の複数契約
異なる複数の会社の火災保険に加入している状態のことを、「複数契約」や「重複保険」などと言います。
火災保険を複数契約すること自体は違法ではありませんが、複数契約をもとに実損額を上回る保険金支払申請をすることは、固く禁止されています。
もとより実損額を上回る保険金は、請求しても支払われません。結果として、単なる保険料の払い損になってしまうため、火災保険の複数契約はしないようにしましょう。
損害保険には「利得禁止の原則」がある
火災保険や自動車保険などの、いわゆる損害保険は、その「損害」という名前からも分かるとおり、あくまでも「損害」の穴埋めを目的とした保険です。よって、火災などによって生じた損害額を上回る保険金が支払われることは、ぜったいにありません。
保険によって利益を得る行為は禁止されている
保険とは、何らかの理由によって損害を被ったり、または社会的に弱い立場となったりしたときに、加入者同士の相互扶助を目的に運用されている制度。よって、かりに保険の複数契約によって損害額を上回る保険金が支払われてしまうと、相互扶助という制度趣旨に反し、加入者は保険金で利益を得ることになってしまいます。そのため、たとえ火災保険に重複して加入していたとしても、実際の損害額を上回る保険金を受け取ることはできません。
なお、保険を利用して利益を得てはならないとする決まりのことを、「利得禁止の原則」と言います。「利得禁止の原則」は、保険金詐欺事件の報道でたびたび登場する用語です。
保険金額の合算が建物の評価額を超えると問題が起きる
かりに「複数契約の保険金の合計額が建物の評価額を上回っても良い」とされた場合、社会には大変な問題が起こることでしょう。
いわゆる「焼け太り」の人が増える
複数契約をした保険が全て認められた場合、建物の評価額を上回る保険金を手にすることができます。すると加入者は、その保険金によって、焼失する前よりも価値の高い家を再建することができるでしょう。
火事になって得をすることを、俗に「焼け太り」と言います。保険金で再建した家が再度火災に遭った場合には、次なる「焼け太り」で、さらに価値の高い家を建てることができるでしょう。
この要領で、一生のうちに「焼け太り」を2~3回繰り返せば、加入者の家は豪邸と化します。あるいは、「焼け太り」で獲得した利益を、家ではなく生活費に回せば、生涯、仕事をしなくとも生活ができるかも知れません。
このような状況は、道徳的にも経済的にも、社会にとって好ましいことではありません。だからこそ、保険には「利得禁止の原則」があるのです。
複数契約をしても何一つメリットがない
火災保険の複数契約をすることに、何一つメリットはありません。むしろ、複数契約にはデメリットしかないことを理解しておきましょう。
複数契約は単なる保険料のムダ払い
上述のとおり、火災保険に複数契約をすること自体は、違法ではありません。ただし、たとえA社で2000万円、B社で2000万円の保険契約を結んでいたとしても、評価額2000万円の家に対して4000万円の保険金が支払われることはありません。あくまでも支払われる保険金は、評価額である2000万円が上限。結果として火災保険の複数契約は、単なる保険料のムダ払いということになります。
親戚付き合い等、やむを得ない理由で複数契約をしている方を除き、火災保険の複数契約はしないようにしましょう。
複数契約を隠して保険金申請を詐欺で訴えられる可能性も
かりに複数契約していることを隠したまま保険金申請をしたとしても、保険会社では、加入者が複数申請をしていることをすぐに把握します。別々の保険会社であるにも関わらず、なぜ複数申請したことがばれるのかは分かりません。いずれの理由にしても、保険金を複数申請したことはすぐにばれることは確かです。
悪質な保険金申請行為と判断された場合には、保険金詐欺として保険会社から告発される恐れもあります。保険会社が詐欺の疑いありと判断した場合には、当然ながら保険金は支払われません。
火災保険を見直しするときの7つのステップ
火災保険の複数契約をしている方は、今一度、加入中の保険の内容を見直し、より理に適った形での保険一本に絞ることをおすすめします。火災保険を見直す際のステップを確認しておきましょう。
1.保険対象を決める
建物だけを保険対象とするのか、または家財も含めて保険対象とするのかを決めましょう。一般には家財も保険対象に含めます。
2.構造級別を確認する
保険対象となる建物の構造級を確認しましょう。コンクリート造のマンション等はM構造、鉄骨一戸建て等はT構造、木造一戸建て等はH構造となるのが一般的です。
3.補償範囲を決める
火災のほかにも、水害や盗難などの別の補償も範囲にするかどうかを決めます。補償範囲が広いほど、保険料は高くなります。
4.保険金額を決める
建物や家財が被害に遭った際の保険金の上限額(保険金額)を決めます。保険金額は、建物や家財などの評価額の上限を超えて設定することはできません。また、保険金額が安ければ安いほど、保険料も安くなります。
5.保険期間を決める
保険期間とは、いわば火災保険による補償期間のこと。1~10年の間で、加入者が任意に決めることができます(年単位)。保険期間が長ければ長いほど、年あたりの保険料が割安となります。
6.地震保険を検討する
たとえ火災などで家が焼失したとしても、火災の原因が地震だった場合には、保険金はおりません。地震を原因とした建物・家財等への被害は、別途で契約する地震保険が補償します。火災保険に地震保険をセットで付けるかどうかを検討しましょう。