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火災保険における「実損払い」とは

ここでは、火災保険の保険金額に関わる「実損払い」について詳しく解説します。あわせて、「実損払い」と比較されることの多い「比例填補」についてもご紹介します。

火災保険における「実損払い」とは

「実損払い」とは、約款で定められた上限の範囲内で、実際に生じた損害額の全額が保険金として支払われる仕組みのこと。たとえば、建物に100万円の損害が生じた場合には100万円の保険金が、あるいは3000万円の損害が生じた場合には3000万円の保険金が支払われる仕組みが「実損払い」です。別名「実損填補」と言います。

これに対して、実際に生じた損害額の全額が支払われない仕組みが「比例填補」です。以下、「実損払い」と「比例填補」の違いについて詳しく理解しましょう。

「実損払い」と「比例填補」の違い

実際に被った損害額の全額が補償される「実損払い」に関連して、損害額の一定比率しか補償されない仕組みのことを「比例填補」と言います。

火災保険の支払いを「比例填補」で契約している場合、実際に建物や家財に被害が生じた際、保険金の支払いにおいて思わぬ事態に直面することもあるので、注意が必要です。具体的には、次のような事例があります。

「比例填補」における落とし穴

  1. 3000万円の保険に加入した。
  2. 火災に遭い、1000万円の被害が生じた。
  3. 保険金は600万円しか支払われなかった。

この事例の場合、一般的には「3000万円の保険に入っていて損害額は1000万円なのだから、保険金も1000万円おりるのでは?」と考えるかも知れません。しかしながら、なぜか保険会社は600万円しか支払ってくれませんでした。これが「比例填補」の落とし穴です。

なぜ600万円しか支払われなかったのか?

火災保険に加入時の建物の時価に対し、どれだけの保険金を設定していたか、という点がポイントです。

仮に時価5000万円の建物に対して3000万円の保険金を設定して契約した場合、建物に何らかの被害が生じても、「3000万円 ÷ 5000万円 = 60%」までの保険金しかおりないのが「比例填補」です。よって建物に1000万円の損害が生じた場合、たとえ契約保険金が3000万円であったとしても「1000万円 × 60% = 600万円」しか支払われないことになります。

なお、もし時価5000万円の建物に対して、同じく5000万円の保険金を設定していれば「5000万円 ÷ 5000万円 = 100%」の保険金が支払われる仕組みになります。この場合、建物に1000万円の被害が生じたとしても100%が補償されるため、支払われる保険金は1000万円となります(実損払い)。

どちらを選んだほうがお得?

火災等によって被害が生じた場合、もちろん、被害の全額を補償してもらえる「実損払い」のほうが「比例填補」よりも有利になります。よって、火災保険の加入や乗り換えを検討している方は、万が一の場合に備えて、可能であれば「実損払い」型の火災保険に加入するようにしたいものです。

しかしながら「実損払い」を選んだ場合、万が一の補償が手厚くなる分、「比例填補」に比べると保険料が割高になるというデメリットがあります。よって一生涯、万が一の事態が生じなかった場合には、支払保険料が多い分だけ「実損払い」のほうが不利になってしまいます。

よって、万が一の時の補償を手厚くした人は「実損払い」を、支払保険料をなるべく安く抑えたい人は「比例填補」を検討すると良いでしょう。

なお、東京消防庁が発表した平成26年中の火災の概要調査によると、都内で発生したすべての火災のうち約8割はボヤとされています。全焼にいたったケースは、全体の3%ほどです。

ボヤを想定した場合は、「比例填補」による保険金でも、一定水準まで自宅を復旧させることは可能でしょう。ただし、全焼を想定した場合には、「比例填補」による保険金で同じ家を建てることはできません。火災保険を契約する際には、その点も考慮するようにしましょう。

建物の時価よりも高い保険契約をした場合

時価5000万円の建物に対して、8000万円の保険契約をするということも、理論的には可能です。時価を超える保険契約のことを、「超過保険」と言います。

「超過保険」の状態で火災保険を契約している場合、仮に5000万円の建物が全焼して5000万円の損害が生じたとしても、補償金額は5000万円が上限になるので注意しましょう。

保険とは、あくまでも被保険者の損害を補償する趣旨で存在するもの。被保険者がお金を儲けるために存在するものではありません。超過分まで保険金が支払われた場合、被保険者は儲かってしまいます。いわゆる「焼け太り」と言いますが、保険の世界では「焼け太り」を認めていません。

「超過保険」の状態で契約した場合、その分、保険料は高くなります。保険料が高くなるにも関わらず、万が一の時の補償額は建物時価の100%までです。よって「超過保険」には、何らメリットはありません。ムダな保険料を支払うことになるだけなので、念のため、この点も頭に入れておきましょう。

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